近年、振り込め詐欺や還付金詐欺といった特殊詐欺被害が増加しています。
万が一詐欺被害に遭って損害を受けた場合、損害賠償請求をするなどして被害を回復することが可能です。
詐欺罪の場合、「刑事」と「民事」で時効が異なるため、しっかりと理解しておくことが必要です。 今回は、詐欺の時効についてお話していきたいと思います。
民事事件の詐欺の時効
民事事件の詐欺の時効は、損害賠償権が失われることを意味します。
民法では、損害賠償請求をする権利の時効は、3年です。
民法では、詐欺の加害者および被害がわかったときから3年の間に権利を行使しなければ、時効が成立して権利が消滅してしまいます。 これを「消滅時効」といいます。
内容証明郵便で支払いを求められると、6か月時効の完成が猶予され、加害者に損害賠償を請求することができなくなります。
また、相手から裁判を起こされたり(請求)、加害者側が詐欺を認めた場合(承認)は更新されます。消滅時効が更新されると、これまで経過してきた時効期間をゼロに戻して、再び3年のカウントが開始されます。
加害者と被害を知らなかった場合でも、行為があった時から20年経過すると、それ以降は加害者に損害賠償を請求することができなくなります。
刑事事件の詐欺の時効
刑事事件である詐欺罪の時効は、「公訴時効」と呼ばれます。
公訴時効は、犯罪が終わった時から一定期間が経過することで、犯人を処罰することができなくなる(検察官が起訴することが出来なくなる)という定めのことです。
告訴することの出来る期間の「告訴期間」とは別のものです。
詐欺罪の場合、詐欺行為から7年が経過した後は罪に問えなくなります。
一部を除いた犯罪の公訴時効は、その犯罪の法定刑が何年かによって決定します。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役ですが、法定刑が10年~15年未満の懲役または禁錮に当たる罪の場合は、「刑事訴訟法250条」で公訴時効が7年と定められており、そのルールに則って、詐欺の公訴時効も7年と決められています。
詐欺事件における慰謝料の時効
特に結婚詐欺などの場合は別途慰謝料を請求することがあり、事情によっては高額な慰謝料が認められる可能性もあります。「慰謝料」とは損害賠償請求の一部に含まれていますが、精神的な苦痛を被った場合に加害者に対して請求する金銭のことをいいます。
慰謝料の時効は、加害者と損害がわかったときから3年間、もしくは事件が発生してから20年間になります。
詐欺未遂の時効は?
法定刑は10年以下の懲役です。犯罪行為が終わってから7年が経過すると起訴されないため、刑事裁判にかけられることがありません。
詐欺未遂罪の場合、時効の起算日は原則として犯罪行為が終わった時から進行するため、被害者に虚偽の情報を伝えるなどの欺罔行為(騙す行為)が終わった時点から進行します。
詐欺罪における時効は中断できる?
詐欺罪は民事事件も刑事事件も、一定の時間が経過すると被害を訴えることができなくなります。
しかし、一定の条件を満たせば時効を中断することができます。
民事事件の場合
民事事件の場合、時効を中断するためには民法第147条に規定されている条件を満たす必要があります。
訴訟や支払督促など、裁判上の請求を行うことが必要になります。
債務者が行方不明の場合、「公示送達」という方法があります。
裁判所の掲示板のような場所に呼出状が掲示され、この手続きによって時効が中断します。
加害者が自分の行為を詐欺であると認めた場合、詐欺で騙し取られたお金が返済されることがあります。
詐欺によって結ばれた契約は、取消権を行使することができます。
ただし、「民法第126条」により取消権は後から契約を有効だと追認をすることができる時から5年間、契約行為からは20年間で消滅します。
約束の期日になったにもかかわらず契約が守られないとして、債務不履行により契約を解除するという方法もあります。
刑事事件の場合
詐欺罪の刑事事件の時効は7年間と定められていますが、次のような場合には時効が中断することがあります。
「公訴の提起」とは、検察官が、犯罪行為を行った疑いのある被疑者を刑事裁判にかける手続きのことを意味し、一般的には「起訴」といわれています。
起訴されている状況であれば、詐欺罪の時効が中断されます。
被疑者(犯罪をした人)が国外にいる場合、その間は時効が中断されます(刑事訴訟法第255条)。
国内で逃亡している場合は、時効のカウントは止まりません。
詐欺被害に遭った場合は、弁護士に相談を
詐欺罪の場合、刑事と民事ではどのような手続きを取るべきかが異なります。
期間の経過によって時効が完成してしまうと、訴えも起こすことができず、相手に受けた被害の弁償をさせることができなくなるケースがあります。
スピーディーに対応を行うためにも、被害に遭ってしまった際はすぐに弁護士に相談することをおすすめします。
詐欺被害に強い弁護士であれば、時効の中断や示談交渉など、状況に合わせて最適な解決方法や各種手続きなどアドバイスを受けることができます。
1人で悩まず、まずは弁護士に相談しましょう。